交通事故と健康保険

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この記事は以下のキーワードが気になる方のお役にたちます。
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  • メリット・デメリット
  • 使えない
  • 自由診療
  • 過失
  • 3割負担
  • 治療費
  • 手続き
  • 第三者行為
書類サンプル ザックリ
交通事故によるケガの治療に健康保険をつかうことができます。被害者にも過失がある場合、加害者が任意保険に入っていない(自賠責保険のみ加入)場合などにつかうと最終的に手元にのこる金額が多くなります。


シッカリ


使えます(手続きが必要)。病院の受付で「交通事故には健康保険は使えません」と言われることもあるようですが、それは間違いです。


これは行政(厚生労働省)や裁判所も以下のように交通事故でも健康保険が利用できるとしています。

「最近、自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者等の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるよう指導されたい。」との通達を出しています(1968年10月12日保険発第106号「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」)。


大阪地方裁判所昭和60年6月28日の判決「国民健康保険法は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うことを目的とし・・・同法に基づく療養保険給付は絶対的必要給付であって・・・交通事故により負傷、疾病した被保険者に対し、療養保険給付が行われなければならないことは当然であって、これを排斥すべき理由はない。」


そもそも、「なんで私は被害者なのに自分の健康保険をつかって治療しなければいけないの?」と考える被害者の方がいると思います。お気持ちはわかるのですが、「健康保険をつかうメリット」でこのあと説明・比較させていただきますが、健康保険をつかうメリットはひじょうに大きいです。まずは健康保険をつかって治療費の負担を減らせて治療に専念するのが大事だと考えます。



交通事故と健康保険 仕組み
交通事故で健康保険をつかった場合のイメージです。

イメージ画像の真ん中に書かれた[手続き]については、このページ内にある「健康保険をつかうには手続きが必要です」で説明しています。




交通事故で健康保険の利用をことわれるのはなぜ?


シンプルに言うと利益が大きいからです。


医療機関の治療は点数制度になっていて、各医療サービスの点数を合計した点数に単価を掛けたものが医療費となります。この単価の部分が健康保険の場合、1点=10円と定められていますが、自由診療の場合は医療機関ごとに違いがあり、1点=20円、まれに25円に設定しているところがあります。


このような理由で健康保険をつかう保険診療と比較して自由診療の利益が大きいため使えないとする医療機関があるようです。


健康保険を使うメリット


治療費がおさえられるのが一番のメリットです。具体的には以下のようなケースでメリットがあります。

  • 被害者にも過失がある場合
  • 加害者が任意保険に加入していない(自賠責保険のみ)場合


被害者にも過失がある場合


以下の条件を前提に下の表をみて比較してみてください。健康保険を使った場合の方が最終的に手元に残る金額が多いことがわかります。

  • 被害者の過失が30%。
  • 10万点分の治療を受けた。
  • 計算の基礎となる[治療費][入通院慰謝料][休業損害]の項目の金額は一例です。

 
健康保険を使わない場合
健康保険を使う場合
治療費
200万円
10万点 × 20円[1] = 200万円(全額負担)
30万円
10万点 × 10円[2] = 100万円(このうち3割を負担)
入通院慰謝料[3]
40万円
休業損害[4]
60万円
損害額の合計
上記3項目を合計
300万円130万円
受け取る賠償額
210万円
300万円 × 70% = 210万円
[損害額の合計]から被害者の過失30%をひいた残りの70%(210万円)を受け取る。
91万円
130万円 × 70% = 91万円
[損害額の合計]から被害者の過失30%をひいた残りの70%(91万円)を受け取る。
病院へ支払う金額
治療費の項目と同じ
200万円30万円
最終的な金額
10万円
210万円 ‐ 200万円 = 10万円
[受け取る保険金]から[治療費]をひいた残り
61万円
91万円 ‐ 30万円 = 61万円
[受け取る保険金]から[治療費]をひいた残り

[1] 健康保険を使わないので自由診療となります。自由診療の場合、医療機関にもよりますが20円に設定してるところが多いようなのでここでは20円にしています。
[2] 健康保険を使った場合は1点=10円と定められています。
[3] 入通院の苦痛に対して支払われる慰謝料のことです。
[4] 交通事故によってケガをした場合、程度によっては仕事ができず休むこともあると思います。そこで休むことによって得られなかった収入を損害として賠償してもらえるものです。


加害者が任意保険に加入していない(自賠責保険のみ)場合


加害者が任意保険に加入していない場合、現実問題として損害を支払う能力がない場合が多く、被害者は自賠責保険に損害を賠償してもらうことになります。


この自賠責保険はあくまで最低限度の補償を目的としているので、傷害の場合に支払われる限度額は治療費、慰謝料、休業補償などすべて込みで120万円です。


健康保険をつかえば治療費は3割負担で済みますが、もし健康保険を使わず、自由診療になると治療費を全額負担することになりますので当然高額になってしまいます。こうなると120万円の枠を治療費だけで使い切ってしまい慰謝料や休業補償が支払われないということにもなりかねません。


これらをふまえて以下の条件を前提に下の表をみて比較してみてください。

  • 10万点分の治療を受けた。
  • 計算の基礎となる[治療費][入通院慰謝料][休業損害]の項目の金額は一例です。

 
健康保険を使わない場合
健康保険を使う場合
治療費
200万円
10万点 × 20円[5] = 200万円(全額負担)
30万円
10万点 × 10円[6] = 100万円(このうち3割を負担)
入通院慰謝料[7]
40万円
休業損害[8]
60万円
受け取る賠償額
0円
治療費が200万円かかったことにより自賠責保険の120万円という枠を超えいるので[入通院慰謝料][休業損害]も支払ってもらえません。
90万円
治療費が30万円なので120万円から30万円をひいた90万円から[入通院慰謝料][休業損害]を支払ってもらうことになります。


イメージとしてはこのような感じです。
健康保険をつかった場合、つかわない場合のイメージ
[5] 健康保険を使わないので自由診療となります。自由診療の場合、医療機関にもよりますが20円に設定してるところが多いようなのでここでは20円にしています。
[6] 健康保険を使った場合は1点=10円と定められています。
[7] 入通院の苦痛に対して支払われる慰謝料のことです。
[8] 交通事故によってケガをした場合、程度によっては仕事ができず休むこともあると思います。そこで休むことによって得られなかった収入を損害として賠償してもらえるものです。

健康保険を使うデメリット


健康保険をつかうことによってのデメリットと言えば手続きが必要になるくらいです。
しかし以下のようなことが考えられますので目を通しておいてください。

  • 使用できる薬や治療に制限がでる恐れがあると言われていました。

    健康保険による保険診療は、使用できる薬や治療に制限があり、被害者にとって十分な治療がうけられないとされていた時期がありました。しかし、現在では、ほとんどの薬や治療方法の費用は健康保険で認められており、それで十分な水準の治療がうけられると言われています。


  • 医師のやる気が低下

    私は経験したことがないのですが、健康保険をつかうことによって医療機関の利益が減ってしまうということもあり、ごく一部ですがいやがる医療機関があるようです。そしてこれが影響してか、医師のやる気の低下につながるようです。

交通事故で健康保険をつかったときのデメリット

健康保険をつかうには手続きが必要です


交通事故のように第三者(加害者)の行為によってケガをした場合でも(仕事中・通勤途中以外[9])健康保険をつかって治療をうけることができます。


しかし、本来、加害者が治療費を支払うべきなので「第三者行為による傷病届」という届けが必要です。この届出をすることによって、被害者が健康保険から給付をうけた場合、健康保険が建て替えた医療費(保険者負担分:7割)を、本来支払うべき加害者に対して請求します。


お問い合わせ、提出書類など手続きについての詳細は、以下のリンク先(全国健康保険協会ホームページ)をご覧ください。

事故にあったとき(第三者行為による傷病届等について)
事故にあったとき(第三者行為による傷病届等について)スクリーンショット

[9] 仕事中・通勤途中の交通事故では労災保険の給付対象となるので、健康保険を使うことはできません。これは法律で定められているのでどちらを使うか選択するまでもなく労災保険の手続きを行うことになります。


まとめ


このページでご説明した通り、交通事故によるケガの治療に健康保険をつかうことは被害者の利益となります。ご自身の状況をふまえて健康保険の利用をご検討ください。

以上、「交通事故と健康保険」でした。